宮大工大阪本校の塾頭です。今回は、大阪本校に在籍する門下生と一緒に、京都府亀岡市にある砥取屋さんという砥石の採掘から加工及び販売までをしている所にお邪魔しました。
私の修行時代、硬い砥石が流行っていて、硬いピンク色の蓮華模様のある天然砥石を使っていました。修行が終わり、たまたま再開した兄弟子からこの天然砥石最高やで??と言われて研がせて頂いた時に、柔らかめの砥石でしたが、纏わりつく研ぎ感じが気持ちよくて、また切れ味も最高だった記憶があります。あの時の感じを探し求めて、道具屋さんが来るたびに砥石を少しだけ研がせて頂きましたが、なかなか当時の感覚に近いものがなく、天然砥石との出会いは一期一会なんだと痛感しました。そして、偶然にも私が役をしている出雲大神宮の近くであることがわかり、良い砥石とのご縁を神様に嘆願しにお参りに行きました。最近は、活動がなくなった関西支部の名簿欄にまだ記載がありました^^いつか再開できればと願っています。
夕方頃、砥石屋さんに到着し、大将が接客してくれました。ここの砥石屋さんは、採掘からやっているので、色んな砥石があります。しかも、どれでも試し研ぎが可能で、時間も気にせずに付き合ってくれるので、自分好みの砥石と出会うためには、最高の環境です。私たちが研いでいる間、大将が近くで色々砥石について教えてくれます。20個くらいは、研いだでしょうか。初めの方は、これもいいけど、なんか違う。そうしているうちに、これか!?というものに出会ったり、いや、こっちの方がいい。という感じ。短時間で見極めるのは非常に難しい。研ぎまくっていると、あの時の感覚にドンピシャの一つの砥石に出会いました。門下生にも、これだっ!!という砥石を一つ探しだすように指導し、一生懸命ああでもないこうでもないという感じで研ぎながら、究極の砥石選びが始まりました。
大将とお話していると、「若い子がこんなに沢山きてくれて嬉しい、時間は気にしないでいいから、納得するまで研いでよ」とお気遣いを頂きました。砥石の採掘は大変な作業みたいでして、お年を重ねる度に、後何年できるか?という状態みたいですが、こうやって若い子が自分が採ってきた砥石を触って刃物を研いでいる姿を見ると、本当に好きなんだなぁと思い、嬉しくなってくるそうです。そういって頂けるのは、こちらとしても嬉しいことです。
ゲームや遊びが好きという感情と、我々もっている職人としての好きという感情は、同じ言葉ですが、まったく違います。前者は、楽しい嬉しいといってプラスの感情で、簡単に得る事ができます。後者の好きは、マイナスの感情である辛い・苦しい・悲しいという感情の上に構築された「好き」で、修行という鍛錬を経てしか感じる事ができない事と思っています。だから、私は若いうちに人一倍苦労した方が、人よりも仕事というものが「好き」という感情が強く持てるのではないかと思っています。今の時代とは逆光しているかもしれませんが、それが人間が持つ本質で、「修行」というものが、人を成長させるために課している要素と思います。これだけが全てとはいいませんが、私もそうやって育ってきましたし、今いる門下生が砥石に向き合う姿を見ると、そのように思います。というのは、気がつけば周りは暗くなっており、3時間も滞在していました。そして、私が選んだ砥石はこれです^^
翌日、鉋を研いでみましたが、やっぱり間違いない。これだ!!という砥石と出会ってしまいました。偶然なのか奇跡なのか?これがあるから、ものづくりというのは、非効率すぎますが、醍醐味でもあります。門下生も、わからないなりにも、自分の指先の感覚で、「今のこれだ!!」を探し出し、感動していました。宮大工にとっては、刃物研ぎは基本技術。禅宗のお坊さんの座禅みたいなものです。動きのある中で静という禅。刃物研ぎは、めちゃくちゃ奥が深いです。ただ刃物を研いで刃物がキレるという感覚で刃物研ぎに取り組んでいるのでは、まだまだ浅いです。刃物研ぎは、色んな所に繋がっています。
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