一般社団法人 宮大工養成塾

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神奈川県に宮大工養成塾が開校

能満寺 住職のインタビュー

宮大工養成塾を立ち上げて、最初の神社仏閣プロジェクトは、能満寺の山門。大阪から神奈川へと向い、火伏せの山門を造らせて頂きました。

宮大工養成塾の門下生に、大切な山門の工事を託して下さった松本住職との出会いがなかったら、神奈川校の御縁もなかったと思います。

出会い

松本住職との出会いは、中国の厦門で開催されていた世界仏教の最大規模の展示会に宮大工養成塾が「日本の伝統建築の技」を展示した事に始まります。「技の展示」??はじめは、そんなもの意味がないだの中国人の共同出店者に言われましたが、鉋削りを披露していると、興味のある来場者がやってきて、「私もやらせてほしい」ということになり、いつのまにか鉋削り体験会になっていました。一人、二人、とやっている内に、多くの人だかりができて、客寄せパンダとしての役割?笑としては成功したのではないでしょうか。2日目か3日目でしたでしょうか、中国人の方しか来ないと思っていると、日本人のお坊さん?がやってきました。話を聞くと、神奈川県伊勢原市にある能満寺さんとの事。現在、本堂再建工事のため、竣工後の位牌の視察にお越しにようでした。たまたま共同出店者の方が位牌をしていたので、概要をお聞きして、後日、日本にて位牌の打ち合わせを行うことになりました。帰国後、数日して、中国人の共同出店者の方も来日し、一緒に新横浜駅のガストにて位牌の打ち合わせをしました。その中で、実は昔能満寺には、山門があったそうでして、もしよかったら、山門をやってみませんか?と御住職からご提案を頂き、それだったら、宮大工養成塾の門下生も参加する形で作らせてほしいとお願いし、旧本堂の古材を再利用するなどの条件で、旧本堂の解体工事から山門再建プロジェクトに参加させて頂きました。

門下生を生活を見る

工場で加工し、現場にて仮組みと本組を行わせて頂きました。工事中、門下生の生活を御住職にも見て頂く機会があり、「大変だろうけど、ここには宮大工になるだけもモノがある」という言葉を頂戴致しました。門下生は、朝5時に起床し、身支度をしてから掃除をし、お弁当と朝ごはんを作ります。6時に朝ごはんを食べて、8時までの作業の間は、工事用に使わせて頂いている東司(といれ)の掃除と刃物研ぎなどの自習をし、作業を迎えます。それから作業に入るわけですが、作業中もテキパキと動き、作業をこなしていきます。夕方5時半頃から夕食の準備をし、6時に夕食を食べ、すぐに買い出しにいき、次の日の料理の仕込みをし、それが終わればその日使った刃物を研いだり、自作の道具を作ったりと、自習をします。就寝するのは、11時頃で、翌朝から同じルーティンが始まる。

志をもった若い宮大工の卵の可能性

同世代の人と比べると、門下生の生活というのは、かけ離れているものがあるかもしれません。けれども、プロの世界に身を置くという事は、普通にしているようでは、丁稚すら卒業できないレベルになります。人として成長し、生活を通じて今まで両親がやってきてくれた事への感謝。多くの家庭では、食事・洗濯・掃除など、お母さんが誰に言われた訳でもないのに、無償でやってくれている事実。自分が自立するために、それを全てをしなければいけない環境に置かれた時、両親への感謝を経験することになります。そして今までは、甘えに甘えてきた人生から自分自身で自立しなければいけない環境。自分の甘さと言い訳をしたい自分、言い訳をしている自分が情けなく思うこととの葛藤が1段階上の人間へと成長させてくれます。そんな彼らの苦悩を御住職は、そっとお見守り頂きながらも、激励のため、近くの温泉や食事に連れていって下さったりと、携わり皆様が門下生を暖かく接して下さっています。しかし、甘えさせる事がいかに人を成長させないかという事は、皆様ご存知で、周り人は、門下生の将来のためになるのは何なのか?という視点で、ご指導をして頂いています。そんな門下生だからこそ、大切な山門プロジェクトに、参加するだけの資格はある。そういって頂いているのだと、私は思っています。なぜならは、これはワークショップではなく、実践型学習(On The Job Training:以下OJT)なのです。ワークショップというものは、楽しければいいです。しかし、OJTは、真剣でなければいけません。そこに妥協や笑いなどは必要ありません。なぜならば、OJTは色んな人達の想いが前提として成り立っているからです。お寺の建築をOJTとして参加させて頂く事というのは、普通はありえません。お寺の建築を素人につくってほしいと思う人なんていません。しかし、思いがあるからこそ、この仕組みが実現しているという事を理解せねばなりません。これを理解できないのであれば、これに参加する資格はないと思います。運営する宮大工、そして、OJT参加する宮大工養成塾の門下生の努力する姿に共感して頂き、託して頂いている訳ですから、これだけは強調して知って頂きたいと思います、塾頭として。つまりは、「真剣」だという事です。

無事に山門プロジェクトが完成

宮大工と門下生の合作による山門再建プロジェクトが無事に完成を迎えました。落慶法要の時、完成した山門をみて、自分たちの想いが「形」として後世にその姿を残せる事への感動と、まだ始まったばかりの宮大工養成塾に託して下さった御住職への感謝。もうこれは、ただ建物を造るという次元を超えて、物語として本くらいならすぐに書けるレベルです。それくらい凄いことが起きてしまったのです。