刃物研ぎの始まりは、鑿研ぎからです。鑿研ぎを極めれば、鉋の刃は簡単に研ぐ事が可能です。まずは、鑿をしっかりと平らに研げるように鍛錬していきましょう。
目次
(刃物研ぎ三種の神器)
中砥石 キング #1000~1200 ×3丁
仕上砥石 キングG1#8000 ×1丁
特大金盤 1枚
今回研ぐ鑿:叩き8分鑿
大入鑿よりも叩き鑿の8分で研ぐと刃物研ぎが格段に上手くなります。まだこれから準備する人は、Amazonからも買える。特大金盤はなかったので、市販のものをチョイスしておきました。
刃物研ぎで大切なのは、ルーティンを作る事です。早く研ぎたいから3丁擦りを適当にしたり、仕上げが終わった後に、研ぎっぱなしにしていたりすると技術習得も中途半端になります。まずは、しっかりと基礎を固めるためにも、刃物研ぎ5STEPを守りましょう。
砥石と金盤というのは、平らではありません。まずは中砥を金盤に擦り合わせて、金盤を平らにしつつ、砥石に面を付けていく作業を中砥3丁と仕上砥石1丁で行います。砥石を金盤に擦り合わせる際は、前後に擦りますが、徐々に左右にスライドしながら往復しましょう。この時、力をあまり入れすぎないように注意しましょう。次に、金盤に対して対角に擦り合わせを行い、左右とも終われば、円を描くように全体に馴染ませれば半分が終わりです。そのまま180°回転させて前後逆の状態で同じように擦り合わせを行えば1つの砥石の擦り合わせが完了したことになります。これを残り中砥2丁と仕上砥石1丁とも、同じ事を行って下さい。
まずは中砥3丁を先ほど金盤に擦り合わせたと同じように砥石どうしを擦り合わせていきます。3丁あるので、Aの中砥・Bの中砥・Cの中砥と割り振るとすれば、AB・AC・BA・BC・CA・CBの6通りの擦り合わせを行います。これは平らではないものを擦り合わせる事によって平均化し、平らに近づけていく3丁擦りという方法になります。
宮大工養成塾では、在籍期間は3丁擦りで平面を出すことを徹底しています。ダイヤモンド砥石やアトマを使って砥石の平面を出す事も出来ますが、この3丁擦りをする事で、平面の感触を手に覚えさえる事で木材を刻む時の感覚として使う事もできますし、鉋の台直しをする時に、捻じれ具合などを手の感触でわかるようになります。いわば手のセンサーを鍛えるために、この3丁擦りは感性を磨く上で最も大切な作業になるのです。さらに、ダイヤモンド砥石やアトマを使った面直しは、定期的に交換しなければならないため、お金も結構かかります。3丁擦りとは、平面の感覚を磨くためと経済的に修行を行う事ができる一石二鳥の作業になります。
3丁擦りによって平らになった中砥の中から一つ選択し、その砥石の平面を仕上げ砥石に擦り合わせて平面を映します。擦り合わせが終われば、水で丁寧に洗い流して、お互いの粒子が残っていないように確認しましょう。仕上砥石の方は、細かい粒子の上に荒い粒子が載っているので、洗いやすいですが、中砥は荒い粒子の上に細かい粒子が入り込んでいるので完全には取れません。まずはこの中砥から研ぐようにしましょう。
鑿はベタ裏、鉋は糸裏という言葉があるように鑿の裏はベタ裏にして定規として使います。鑿でもっとも大切な事は、裏をどれだけ平らに裏押しできるかなので、丁寧に裏押しをしましょう。
1番良い裏押しの形状は、二等辺三角形になります。これは刃先をしっかりとおろせているとこの形になります。しかし、裏すきの具合が一定でなかったりすると、瓢箪形になったりしますが、これでも大丈夫です。
大入れ鑿や中叩きまでの穂が短い物は、長く突くような事がないので、裏押しの面の延長戦が首を回避し、口金に当たるくらいが丁度良いです。首に当たると、首の所で段差で出来る事と、毎回裏押しの角度が変わるため、裏が一定になりません。
叩き鑿や突き鑿など、穂が長い物は、突く作業も行うため、どこまで突けるように柄を回避する感じに調整していきます。刃裏の角度と柄の角度が付きすぎると叩いて使った時に、力が分散したりブレたりしやすくなるので、裏の平らな感覚を体に覚え込ませて刻むか、口金と柄の設置部分に延長戦をもってきて、柄の角が当たる部分は、鑿ではつると、少しは軽減する事ができます。いずれにしても、刃裏よりも首が出ていて当たっている状態が一番いけないので、次に説明しますね。
首の辺りで段差が出来るのが最もダメな形になります。これは、鑿の裏の延長線が首と干渉しており、裏押しする時に場所が定まらないため、結果として段差が出来ます。たまに首が逃げているものもありますので、裏押しをする前に現状がどのようになっているかを確認しましょう。
裏押しする時に首が当たる場合は、首を少し曲げて裏押しに影響ないようにしましょう。
首を曲げるには、まずは口金から穂先を外します。外し方は、口金をゴムハンマーか木槌で叩いて、振動で外します。外す前に向きがわかるように印をしておきましょうね。さて、穂だけになれば、まずは穂を熱湯で温めて叩いた時の衝撃で亀裂が入らないように熱を加えてあげます。